地産良品について


本日で、知多西三河をはじめた取り扱った「地産良品市場」という物産販売が終了した。
もちろん、先日のシンポジウムをはじめ、知多半島との縁が深まったとはいえ、やはり違う文化圏の産品を実際に紹介するとなると、やはり色々な反省点がある。

今回は、その反省点はともかく、色々と生産者の方々と対話をさせていただく過程で、この地域を知れば知るほど資産・資源がある。それは物に限らず、作り手やそのスピリット、あるいは歴史的背景や地理的な恵みなど。

確かに、それも想像以上にあり、奥深い迷路に迷い込んだような心地もしたのだが、それと同時に、この地の方々と対話させていただく中で、「地産良品」、つまり郷土のクオリティプロダクツやそれを取り扱うことについて、改めて私自身のプリンシプル・方向性を確認させていただく(気づかせていただく)機会をいただいたと振り返ることができる。

そのことについて、以下の5点で振り返りたい。

 

①作り手である「人」に焦点を当てて、その思いや信念にスポットを当てたり汲み取りたい。

これは、日東醸造の蜷川社長にお話を伺った時、ふと気づかされたことでもあるが、よく考えれば当たり前のことである。
ある時、戦後の流れから徐々に科学的に精製された塩などを使用していた時期もあったそうだが、それを止め、足助に蔵を移転。良質の水、気候(温度)、塩(静岡の天然塩)、小麦(愛知の小麦、日東醸造の白たまりは大豆は全く使用せず、小麦により醸造される日本でも希少な調味料)のみに転換した。(従来の自然なものに戻した)
これは、確かに自然の資源と豊かで安全な環境により醸造されるものであることは確かなのだが、やはり、より安全で自然な、良いもの、本物を作ろうという姿勢や判断、決断をする「人」から始まっていることは確かなのだと。足助に足を運び、やはりそう思わされた。
人の判断や行動に完全無欠というのは無いのかもしれないが、やはり、良いものを作り人や自然のことをできるだけ慮る姿勢を持つ作り手の判断や日々の努力に共感し、支持したいと思わされるものであった。

 

②地域性やストーリーに根ざしたオンリーワンの産品。

これは、ちょうど5月にお目にかかる機会があったフランスの美食文化研究の第一人者、ジャン=ロベール・ピット氏のお話を聞いても同様であるが、地理的なものが、その地に食文化を育み、歴史的に守られたり変遷することで、豊かな食文化が育まれていくということが、詳細は割愛するが、知多半島などを見ると、よく分かる。その土、気候、地理的条件、人といった固有性がまさに食文化を育んでいる。
一方で、歴史にも深い浅いがある。今回、紹介することはできなかったが、半田にある某ソース屋さんの歴史は、「たまり」のように古くはない。
しかし、そこに誕生した背景があり、今も、その背景のもとに作られているのであれば、やはりそれはストーリー性に根ざしたオンリーワンの産品であり、価値があるものであるように思う。
歴史は過去にも作られるし、また食文化は現在進行形でもある。ただし、伝統的なものの一部に関しては、核となる価値、核心を置き去りにして流行に流れてしまうと薄っぺらい価値の薄いものになってしまいかねないので、そこには注意が必要だとは思いますが。

 

③製品が理解され、消費されることで良い社会的影響がもたらされるものである。

今回紹介させていただき、随分親しくさせていただいている知多の二蔵は、両方とも木製の甑(こしきと呼ばれる蒸米用の杉製の木樽)を使用し、地域の米、そして水を使っている。
伝統的な酒造りは、森林、水、土、そして米作りや木工など自然や農村といった多面的な社会的意味を持った産業であり文化を支えている。
よりザクッといえば「社会的共通資本」としての農村システムと高い関連性を持つ産業のひとつに酒造業があり、一つの社会的機能を持っている。
ものづくりには、社会的関連性のないものは無いと思うのだが、特に長期的に人々の豊かさに資する「もの」やそれを楽しむ経験、知性的消費を支持したいと、例えば蔵人と対話する中で、ひしひしと感じる。

※ 社会共通資本については、前回のシンポジウムで挙がったキーワドの一つでもあります。よろしければ報告書もご覧下さい。

 

④現実も踏まえながら、製品の品質や安全性、自然志向といったことに対して追及や探求されている生産者を支持したい。

これは①とも関連するが、特に私は、彼らからもっと学びたいと、今回の一件を通じて痛切に感じている。
今度の土日は、再び長野のリンゴ生産者、小林さんのところを訪問する。この人の思いや行動からも、農業の一つの側面が見えてくる。高齢ではあるが、彼の知見や思いを次世代に生かすことを、学び、考えたい。

 

⑤価格における妥当性があるものを対象とする。

安易にパッケージやマーケティングコミュニケーション、表面的なブランディングで見せかけて価格を上げるということについては疑問を持っているが、正当に価値を評価されていないものや、人の思いを反映させるための仕立て(例えば折形の本来の趣旨)を以って価値や価格に妥当に反映させることは必要善であると思い、その価値・価格付けにおいてやはり妥当な姿勢を図っていきたい。
農薬の使用を抑制し、土作りから手間と費用をかけて出来上がった見栄えの悪い良品が、農協から規格外としてはじかれて買い叩かれることが、「妥当に価値が評価されている」かということなど。

 

このような諸所の思いをもとに、今後、素晴らしき作り手の方々に対する理解を深めていきたい、いかねばならないと感じた、この期間であった。


4/30シンポジウムの報告書が完成しました


2016年4月30日(土)に、International Sake Federation(国際日本酒普及連盟)が主催となり愛知県常滑市の澤田酒造にて開催したシンポジウム『中部からクールジャパン発信:知多半島を例に中部エリアの食文化発信について考える』の報告書が完成いたしました。

以下より閲覧が可能です。

↓ ↓ ↓

160430_シンポジウム報告書ds.pdf


和食のユネスコ無形文化遺産登録について


最近、「クールジャパン」の影響もあってか、『「和食」が世界遺産に登録』され、世界的にブームになっているというような印象をなんとなく感じてしまうのですが、では、和食とは何か、世界的ブームとはどのようなものか、といったことについては、それぞれの見解があるだろうと思います。

今回は、最近気になっていたので(と言っても「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されたのは2013年なので今更ですが)そんな「和食」の無形文化遺産(Intangible Cultural Heritage)登録についてどのようなことが記載されているのかと思い、ユネスコの公開されている申請様式を見ました。

<※こちらから確認ができます。>

ここには、『和食;日本人の伝統的な食文化 – 正月を例として -』として、以下のように概要が説明されていました。

 

== 以下、私訳を転載。 ==

「和食」は技術、知識、慣習、製法上の伝統、調理法、準備、食事の経験を包含した食に関する社会的慣習である。
それらは、自然への敬意という日本人の精神と結びつき、持続可能な自然資源の活用と密接に関連している。
「和食」は、日々の暮らしや、年中行事と共に発展し、自然環境や社会環境と人との関わりの中で、時と共に形作られてきた。

「和食」に関する基本的な理解や、社会的、あるいは文化的特徴は、正月のお祝いの光景に見いだすことができる。
新年に日本の人々は、世代を超えて伝わる正月の伝統に浸り、日本人としてのアイデンティティやコミュニティについて再度確認することになる。
正月における「和食」は、歴史や地理的な特性によって、それぞれの土地にもたらされた郷土的特色を色濃く反映している。
人々は、新年の神々を迎えるにあたり、様々な準備を施す。
その土地で得ることのできる食材を元に、餅(お米をついたもの)や、美しく装飾された「おせち」、「雑煮」、「屠蘇(とそ)」と呼ばれる、特別な、それぞれが象徴的な意味を持つ料理の数々が用意される。
それぞれの料理は、特別な食器によって提供され、家族や近しい人々の輪の中で、健康や社会的結束を祈念して共有される。
これらは、年長者から子供達に対して、社会的慣習に含まれる伝統的な意味を伝える良い機会となる。

日常において「和食」は、伝統的でバランスのとれた食事を共有することを通して、日本人がアイデンティティを確認し、家族を養い、コミュニティの団結を導き、健康的な生活に寄与する重要な社会的機能を有している。

== 以上。 ==

 

以上が、ユネスコの資料ので紹介されている「和食」についての紹介内容ですが、農林水産省の概要資料では、『「和食;日本人の伝統的な食文化」と題し、「自然の尊重」という日本人の精神を体現した食に関する「社会的慣習」として提案。』し、採択されたと表記されています。

一方、日本政府がイニシアチブを取り、民間の出資を募り日本の文化的輸出を後押しする「クールジャパン機構」では、ラーメンの一風堂に対し20億円の出資をしたことがニュースにもなっています。

辻調理師専門学校の校長でもある辻芳樹氏は、書籍『和食の知られざる世界』[新潮新書,2013.12]の中で、ラーメンも広義の和食であると述べていたと記憶していますが、これらの解釈について、現段階で明確な判断はできないのですが、「和食」自体が人の文化性(心身の豊かさや活力に良い影響をもたらすものを創造する本能的能力)に根付く価値あるものであることを、国際的にも認めるだけのものであるということは、ユネスコの無形文化遺産登録を通じて、確認できることなのだろうと思います。

これらの国際的に価値として認められ得る核となる要素や観点も加味した上で、私どもの取り組んでいる日本酒の国際発信などを含めた「食文化発信」や交流・保全について深めていくことができればと考えております。

本文の最後に、4月30日に澤田酒造様で開催させていただいたシンポジウムに際して、(当日に病気により参加いただくことができなかった)加藤雅士名城大学農学部教授よりお寄せいただいた開催に際してのコメントをご紹介させていただきたいと思います。

このような、様々な動きを通じて、食(を通して見る社会的慣習や環境)に関する学びや発見を得ることは、非常にありがたいことでもあります。

 

== 以下、加藤先生のコメント。 ==

平成25年12月に「和食」が『「自然の尊重」という日本人の精神を体現した食に関する「社会的慣習」』として、ユネスコ無形文化遺産に登録され、日本の和食、食文化や食材が注目度を高めています。
私自身、昨年8月9日のミラノ万博会期中に、『愛知の発酵食品の魅力』と題し、在ミラノスイス商工会議所にて行われたシンポジウムの基調講演をさせていただき、現地における「和食」に対する関心の高まりを肌で感じることができました。
「食」をテーマとし、背景にある環境や農業、食の安全や貧困問題などに焦点を当てたミラノ万博が世界に投げかけた問いかけの答え、その一つが、まさに先述した「和食」のユネスコ無形文化遺産に登録された際の理由と重なっていることは、着目すべき点であるように感じます。

しかしながら、伝統的な食文化に対し、食の楽しみや悦びとともに、大切に守り育てていくという価値観や行動という側面においては、我が国以上に、1980年代後半から生まれた「スローフード」運動に代表されるようにイタリアにおいて盛んである一方で、日本においては、大切な歴史的資産(遺産)を持ちながらも、常に喪失の分岐点にいるような危機感を感じています。

すでに、今、この土地に育まれてきた資産を、過去の遺産としてではなく、今日においても私たちの豊かな、生きた文化として、楽しみ、育み、守るために、今一度、取り組みの見直しをしていくことが大切であると強く感じます。
そして、今回、私の故郷でもあり、歴史的にも和食の重要な食材である「醸造製品」のメッカである知多半島や西三河、そして自然風土を代弁する地酒の生産地としても十分に力のある愛知がその発信地としての取り組みを始めることに、大変意義を感じています。

今回のシンポジウムも一つのきっかけに、ぜひそのような社会的な機運が生まれ、具体的な取り組みへと結びついていくことを期待しております。

東海4県21世紀國酒研究会  座長
加藤 雅士

== 以上。 ==


ご案内|一坪の和菓子屋コーヒースタンド終了


昨日3月26日の恵那市岩村の「清和堂スペース」における出店を最後に、「一坪の和菓子屋コーヒースタンド」事業は終了することとなりました。

当初、台湾向けの文化普及事業の一環として計画され、昨年4月からプロトタイピングとして実施された本事業ですが、状況変化や検証を踏まえて、工房久悦の戦略見直しや優先順位の変更を行い、次年度(本年4月より)から、廃棄・縮小することとなりました。

今日まで、ご来店いただいたお客様ならびに、関心を持っていただいたお客様には大変感謝を申し上げます。
工房久悦は、実施する内容に変化はありますが、当初の理念・目的については一貫し、地域文化資源の活用による国内外の人々への文化的経験の提供に繋げる機能提供や構築を引き続き行ってまいります。
皆様のご理解をお願い申し上げます。

代表 宮田久司

工房久悦(説明資料)-724x1024