「残念な」麹屋さん

郷土の食材に携わる身として、様々な生産者との出会いから、本当に様々なことを考えさせられます。

そして、そこに正解があるのか、正しい見解があるのかというと、胸を張って「YES」とは言い切れないことばかりです。

 

今回、名水を武器に地場産業や観光振興に取り組んでいる土地で出会った「麹屋」さんとのやりとりもまた、考えさせられるものでした。

表題に「残念な」というタイトルを載せたのは、まず第一に、この麹屋さん、あと3年で麹作りをやめる算段を立てているというのです。

朝早く、夜遅く、地下にある麹室での激しい作業。さらに味噌や甘酒といった麹を使った製品作りもし、直販のための手配もしなければならない。それを老夫婦で賄っているのだから、確かに仕方がない。

黒く塗った麹蓋で作る、粘度(麹菌の繁殖密度)の高い米麹、そして豆麹。
確かに、見ていて感嘆してしまいそうなものです。

様々な食材を熟知する、弊社の催事でお手伝いいただく食のスペシャリスト「Mさん」も、「これはこのまま食べないと勿体無い」というほど未知のクオリティだと評価を下した間違いの無いものです。

そこで出していただいた某地域の郷土食「はまな味噌」も、甘みと辛味、旨みが自然な形で融和したまさにご飯のお供に、なんとも贅沢なものでした。

もちろん、科学的な添加物なしの昔ながらの品々。

本当に残念です。

 

しかしながら、こう言った素晴らしいものを作られている生産者に良くついて回るのも、また一方の「残念な」側面があります。

今回の場合は、長話。

もちろん、話の節々で郷土の食文化や水の話、そして同業者の裏話などなど、すべてがその土地や生産者を知る上で私にとっては貴重な情報です。

しかしながら、その後に自らの過去の栄光の話、孫の話、販売している発明品の話、折紙の話など、計3時間にも及ぶ話の中で半分が、お客様である私たちにとって「どうでもいい」話なのです。

自らの話したいこと、自らのアピールを思うがままにお客さんに発表する。

この姿勢は「お客様視点」、「マーケットイン」の視点を踏まえていないからに他なりません。

 

もし、そのような発表や自己顕示のために時間を使うのであれば、クオリティを保ちどう効率化や商売の可能性を追求しないのか?

もう少しお客様視点からものを見て、気持ち良く買い物をしてもらい、自社も潤う方法を探求しないのか?

と、どうしても思ってしまうのです。

 

結果として、いいものを作っているのは分かるけれど、「大変で儲からない商売」ということで、後継が育たず、長い歴史に幕を降ろすという結果に至ってしまう。

案の定、ここもご子息は別で職を得ており、跡を継ぐということはないようでした。

 

こう言った状況に直面している、特に伝統的な郷土食の担い手(酒造、醸造業、食品加工業、農林水産業など)も数多くいると実感しますが、もちろん、ご子息が跡を継がないことの方が幸せなのかもしれないとか、効率化を追求し、クオリティや、その商店ならではの「味」も無くなってしまったら残念だとか、そもそも担い手の自己の発表や自己顕示、すなわち自己満足自体も決して無下にできないものなのではないかとか、様々な思いはあります。

そんな現状に直面しながら、どうアイデアや流通上の支援、あるいは資本的なバックアップ、あるいは社会環境の整備によるバックアップにより「担い手のブレークスルー」を支え、郷土文化資産であり、多様で安全な食文化が守られることによって実現する生活者の豊かさを担保するために、振興や保全を支えていくか。

弊社は学習とトライ&エラーを重ね、そんなことのために「暗躍」していきたいと思います。

答えのない問いかけにこそ、未来を想像する可能性が潜んでいるのかもしれません。

〔文責:宮田久司〕

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