要素複合的結果産業としての「観光」

人口が減少していく日本、特に地方にあって、2007年より施行された観光立国推進基本法から続く、国の観光立国への流れには期待を寄せる関係者も多いと思います。

外国人観光客の入国者数は、2007年にはおおよそ835万人だったのが、昨年2015年には約2201万人と7年間で264%以上の伸びを見せています。

もちろん、人口が減少していく地方では、都市部からの人口流入(移住定住)はハードルが高いにしても、ぜひ来てお金を落として欲しいというのが、一つの期待としてあり、観光促進施策というのが、一つの重要なテーマとして挙がっていることと思います。

私が関わっている地域でも、やはり観光というのを切り口に地域振興を図っていきたいということで、行政や公益的な事業を行う民間団体が頑張っていらっしゃいます。

 

ただ、ここで思うのは、ただ闇雲に観光振興が必要だということで、面白可笑しいポスターや動画を撮って周知させる「プロモーション」や、名物となるキャラクターを生み出し発信するプロモーション施策としての「ゆるキャラ運動」、あるいは一瞬の打ち上げ花火として盛り上げを促す「打ち上げ型イベント」、そして旅行会社にお金を貢ぎ魅力が薄く、ターゲットや打ち出す価値も曖昧な旅行パッケージを造成してもらう「モニターツアー」や、それにメディアも入れた「ファムトリップ」などなど、どうしてもこうした外に「目立ち」、「なんとなく盛り上がったり形が見えたりする」事業に目移りしたり、偏重したりする向きもあるような気がします。

施策を立案し、執行する関係者は、ぜひ観光を進めることの「目的」を整理し、その上で受益者(ステークホルダー)を明確にし、短期の利益と長期の導きたい成果の双方を見据えながら、妥当な目標設定を行い、ソリューションとなる施策や事業を進めていただきたいと思います。

 

観光は、細かな地域性等を踏まえずに言えば、大まかには、先日の「農商工連携・六次産業化」と一緒で、「地域資源をベースにした産業化による振興と地域環境の保全による生活者の暮らしの向上」が一つの目的であり手段であると思います。

地域資源というのは、人というものや事業者というものもあるでしょうし、自然やそれに由来する生活文化、風習、歴史的な文脈、食文化、そしてインフラなどの社会資本も該当すると思います。

それをいかにして産業化させ、飲食店や旅館ホテル、地域食材を提供や販売する商店、土産物店、人を運ぶ旅客運輸、それを体験などに落とし込んで楽しんでもらうレジャー産業の人やガイドさん、あるいはその全体をコーディネートするランドオペレーターさん等など、多くの「担い手」が関わり、地域資源を商品に変え、地域内外の消費者に対し、伝え、「財やサービス」として価値を提供し、消費者が価値経験(文化的経験)を受益することによって「観光」という結果、あるいは「事象」が成立すると思うのです。

そして、一つの「担い手」だけでなく、多くの「担い手」が、一定の土地(フィールド)を背景に価値経験を提供することによって「地域観光」が成立し、その価値提供を継続し、良い印象を与えていくことで地域の「観光的ブランド価値」が形成されてきます。

 

その中で、例えば「プロモーション」は、その土地の認知を高め、印象としての「観光的ブランド価値」をより明確に力強く訴えていくために必要なツールとなります。

一方で非常に重要なのは、やはり地域の産業化を具現化させる地域の「担い手」としての産業主体であり、さらに言えばその産業主体の小さな(あるいは大きな)「ブレークスルー」の集積が、地域の観光的ポテンシャルを顕在化させ、「観光地域づくり」の実態を形成します。

また、その産業化を担う産業主体の背景を支える自然資源や人々の暮らし、文化や環境といったものは、地域を成立させる基盤となるものですが、「卵」(Performance)だけでなく、それら「鶏」本体(Performance Capability)にも還元させていく視点も重要になります。

また、市民交流や(帰省や友達付き合いなど)家族や友人間の交流による移動にも産業化している要素があれば、観光的波及効果がもたらされるという面で、重要なファクターとして位置付けられます。

 

これらの「総体」や個別のアクティビティを捉え、評価し、地域として高め、施策としてその総体的な量や質の人的、金銭的、あるいは情緒的側面の向上に対して、支えていく、ファシリテーションしていくということが政策を立案し、執行する側には求められます。

特に、現代は、大勢がバスに乗って押しかけ、どこか観光施設を見て、大規模なドライブインで食事をし、またどこかに行ってしまうというタイプの観光は常に衰退傾向にあります。

外国人観光客も、一時は中国からの観光客をはじめ「ゴールデンルート」を巡り、家電やさんで爆買いさせ、帰っていくというマスツーリズムが脚光を浴びていましたが、今や停滞気味であるばかりでなく、違法ガイドの問題や、サービスの利益率低下、ブランド価値の低下を招き、周辺地域への波及効果も薄いなど課題が挙がっているため、検証や修正が必要となるでしょう。

個別具体的な価値観や関心、需要を持つ「個人」が、それぞれの判断を元に経済行動の一つとしてある地域に出かけ、価値経験を得て、財やサービスを購入し対価を支払う行為について、該当地域は理解する必要があると思うのです。

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今年、ドイツ西部のルクセンブルクに近いTrierという街やBernkastel-Kuesという町に行ってきました。

ルクセンブルクは世界遺産にもなっている美しい街ですが、Trierも同じくローマ時代の遺跡がある美しい街です。

ルクセンブルクに主要目的をおきながらも、Trierの方が宿賃が安く、Trier大学の先生とご一緒するという目的もあり滞在しました。

街中は美味しい料理とワイン(近年大きく質も向上してきたモーゼルワイン)を楽しみながら、ドイツらしい町並みとDOM(大聖堂)をはじめとした中世から続く現役の遺跡も見たり、現地の人や旅人と話したり飲んだり、とても楽しい経験でした。

ある日は、Trier大学の先生の運転でワインツーリズムが盛んな近くの町Bernkastel-Kuesに行き、醸造家との話を聞きながらテイスティングを楽しんだり、美しいぶどう栽培地を見たりとこちらも掛け替えのない経験でした。

そして、TrierもBernkastel-Kuesも小規模な地方都市や農村であるにもかかわらず、これらの個人客に支えられて(Trierは遺跡があるためツアー客もいましたが)、随分と賑わっていました。

当然ながらワインを買う、レストランで食事をする、宿泊施設で宿泊するという行為が伴います。

またレストランで食事をする際には当然、地域の芋や豚肉などが出てきます。そして、それらの農産物が地域の土地や人々の暮らしや文化を守るベースにもなり、外部の消費がそれに役立っています。

若い醸造家の意欲的な取り組みに対する出会いもあります。

外部から見ると、その土地の地域資源や産業化し観光地域づくりを成立させている要件も見えてきますし、また核となる資源やアイデンティティも見えてきます。

そこにいる担い手は、最初の出発点は必ずしも観光ではないかもしれません。

農業、製造業、サービス産業、住民、それぞれの「担い手」や生活者が、それぞれの中で、主体が価値を高める取り組み、あるいは顧客に喜んでもらい自らの生活を向上させる取り組みを重ねることにより、総体として「観光的ブランド価値」の形成に寄与しているのです。

「観光地域づくり」には、観光的発信に囚われるのではなく、中小の「担い手」の小さな(あるいは大きな)「ブレークスルー」を促す小さな一歩と広いバックアップが望まれているのではないでしょうか?

あるいはそれこそが観光的波及効果の最大化に近づく重要な要素であり、それにより「観光を推進すること」が産業的、あるいは文化的、社会的意義を持つということにもつながるのだと思います。

 

ごく最近は、こう言った観光の側面を認識し、多様な要素を見ながら地域の社会的環境、ソフト面のインフラを整えていこうという動きも見られるようになってきました。

これらの認識の変化や取り組みの変化から、より良い地域社会が形成され、人々の暮らしの向上や生活文化の振興や保全につながり、より良い日本や世界の運営につながっていくことを願うばかりです。

もちろん、我々もそのための貢献余地があれば、献身を惜しみません。

〔文責:宮田久司〕

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「予算がない」という欺瞞を超えて

2016年もあと僅かですね。

光陰矢の如し、で、刻一刻と時間は待ってくれません。

今年一年を振り返ると、1年前と思うと、大変なこともあるけれど、ずいぶん楽しい日々を送らせていただいているとも思います。

10年前に戻ってみたいという思いもあるけれど、人生の中でいつが良かったか?と問われると、結構、今が一番楽しいんですね。

 

時間は状況に少なからず変化を与えてくれます。そして、人も少なからず変化していきます。

私も少なからず変化があるように思います。

 

振り返ると5年前の2011年には「東日本大震災」がありました。

もう5年も経過しています。

私は、その2011年の11月一杯である地方自治体を退職しました。

震災の影響もあるかもしれませんが、それ以上に、ここでは深く述べることはしませんが、当時の市長とともに進めていたプロジェクトが頓挫したことが大きな要因です。

そこで、地域や組織にいることが、耐えられなくなったのです。

当時の市長は、その年の翌年、大変惜しくも、ご病気で亡くなられました。

 

私は地方自治体で構成する広域観光推進の協議会(外郭団体)で2年半、その後ある自治体の商工観光課で4年弱と、観光行政や地域振興に長く携わらせていただく機会をいただきました。

そして、今でも当時学習させていただいたこと、行政的(公益的)なメンタリティ、信念(思い)が深く刻まれています。

赤子の魂が百までと言われるように、ファーストキャリアで培ったものは、どうやら心身に染み付いてしまっているようです。

もちろん、そこでこの方法では「ダメだ」と思えた気づきや、検証して改善や放棄をすべきと考えたことについては、今になってはより冷静に振り返ることができると思っています。

 

実は、当時、直属の上司(すなわち当時の係長)を飛び越して市長とプロジェクトを進めることになったのにも理由があります。

理由は簡単。そのメンタリティや仕事のやり方、理解や視野の度合いが違うと実感していたからです。

さらに、新しい要素を学習し、地域にとってより有益な方策を考え、挑戦しないというのが特徴でした。

その言い訳は色々とありますが、その一つが「予算がない」。

きっと、様々な自治体の現場で飛び交っていることでしょう!

こんなことばかりやっていても仕方がない、仕事をまともにやるとしたらスケールも含め意義あることをやらなければと、市長に直接の直談判。メール、そして廊下でのエレベーターピッチ。。。笑

 

「予算がない」

今思うと、この言葉がどれだけ欺瞞に満ちているかを力を込めて話すことができます。

なぜなら、すでにそこに予算が付いているからです。

そこで労働している時点で、被雇用者である当事者に手足、そして頭が生み出す価値というもの(の期待値あるいは貢献価値・労働価値)に対し、対価としての貨幣が支払われている訳です。

創造性を発揮すれば、またその創造性を背景にトライ&エラーや様々な試行錯誤、折衝を繰り返す中で世にとって有益な、あるいは納税者にとって必要な、事業なり施策なり、あるいはもう少し小さなアクションなりが導きだせるはずなのです。

そのブラッシュアップが集積された時に、あるいはそれが形をみせ始めた時に、そして有益性を見せることができた時に、必要なリソースは集まってくるのではないでしょうか?

あるいはそうなるべく集めるということなのではないでしょうか?

資源は、内部、財政のさじ加減だけに存在している訳ではないのです。

ここで、まず3流と2流以上とを分けると言えるような気がします。

 

今、私に担保された人件費はありません。

しかし、それは私の決断ですし、それだから「予算がない」とは言えません。

知恵を絞り、行動し、トライ&エラーをし、顧客にとって価値あること、関わる人々にとって価値あること、支えてくださる方に良かったと思っていただけること、そして社会にとって有益なこと。

それをただ追求し、自らが成長していくだけなのです。

 

幸いなことに、今、私が関わっている関係の皆さんは、こう言った欺瞞のない方ばかりです。

限られた資源や環境、状況の中でいかに現状を打破し、有益な結果を導き出すか?

そんなメンタリティで動いている方々が多いです。

物事を進めていくとき、動くとき、やはり人のつながりが大切であると改めて感じる今日この頃です。

欺瞞を超え、熱意ある、あるいは味のある、多様な人とともに、響き合いながら歩んでいくことに意義を感じ、自らの役割を発揮していきたいと感じています。

2017年、そんな関わりの中から、面白い結果が一つづつ現れていく予感がしています。

今から非常に楽しみです。

〔文責:宮田久司〕

「残念な」麹屋さん

郷土の食材に携わる身として、様々な生産者との出会いから、本当に様々なことを考えさせられます。

そして、そこに正解があるのか、正しい見解があるのかというと、胸を張って「YES」とは言い切れないことばかりです。

 

今回、名水を武器に地場産業や観光振興に取り組んでいる土地で出会った「麹屋」さんとのやりとりもまた、考えさせられるものでした。

表題に「残念な」というタイトルを載せたのは、まず第一に、この麹屋さん、あと3年で麹作りをやめる算段を立てているというのです。

朝早く、夜遅く、地下にある麹室での激しい作業。さらに味噌や甘酒といった麹を使った製品作りもし、直販のための手配もしなければならない。それを老夫婦で賄っているのだから、確かに仕方がない。

黒く塗った麹蓋で作る、粘度(麹菌の繁殖密度)の高い米麹、そして豆麹。
確かに、見ていて感嘆してしまいそうなものです。

様々な食材を熟知する、弊社の催事でお手伝いいただく食のスペシャリスト「Mさん」も、「これはこのまま食べないと勿体無い」というほど未知のクオリティだと評価を下した間違いの無いものです。

そこで出していただいた某地域の郷土食「はまな味噌」も、甘みと辛味、旨みが自然な形で融和したまさにご飯のお供に、なんとも贅沢なものでした。

もちろん、科学的な添加物なしの昔ながらの品々。

本当に残念です。

 

しかしながら、こう言った素晴らしいものを作られている生産者に良くついて回るのも、また一方の「残念な」側面があります。

今回の場合は、長話。

もちろん、話の節々で郷土の食文化や水の話、そして同業者の裏話などなど、すべてがその土地や生産者を知る上で私にとっては貴重な情報です。

しかしながら、その後に自らの過去の栄光の話、孫の話、販売している発明品の話、折紙の話など、計3時間にも及ぶ話の中で半分が、お客様である私たちにとって「どうでもいい」話なのです。

自らの話したいこと、自らのアピールを思うがままにお客さんに発表する。

この姿勢は「お客様視点」、「マーケットイン」の視点を踏まえていないからに他なりません。

 

もし、そのような発表や自己顕示のために時間を使うのであれば、クオリティを保ちどう効率化や商売の可能性を追求しないのか?

もう少しお客様視点からものを見て、気持ち良く買い物をしてもらい、自社も潤う方法を探求しないのか?

と、どうしても思ってしまうのです。

 

結果として、いいものを作っているのは分かるけれど、「大変で儲からない商売」ということで、後継が育たず、長い歴史に幕を降ろすという結果に至ってしまう。

案の定、ここもご子息は別で職を得ており、跡を継ぐということはないようでした。

 

こう言った状況に直面している、特に伝統的な郷土食の担い手(酒造、醸造業、食品加工業、農林水産業など)も数多くいると実感しますが、もちろん、ご子息が跡を継がないことの方が幸せなのかもしれないとか、効率化を追求し、クオリティや、その商店ならではの「味」も無くなってしまったら残念だとか、そもそも担い手の自己の発表や自己顕示、すなわち自己満足自体も決して無下にできないものなのではないかとか、様々な思いはあります。

そんな現状に直面しながら、どうアイデアや流通上の支援、あるいは資本的なバックアップ、あるいは社会環境の整備によるバックアップにより「担い手のブレークスルー」を支え、郷土文化資産であり、多様で安全な食文化が守られることによって実現する生活者の豊かさを担保するために、振興や保全を支えていくか。

弊社は学習とトライ&エラーを重ね、そんなことのために「暗躍」していきたいと思います。

答えのない問いかけにこそ、未来を想像する可能性が潜んでいるのかもしれません。

〔文責:宮田久司〕

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六次産業化・農商工連携フォーラム

12月14日に中部経済産業局、東海農政局が主催する「六次産業化・農商工連携フォーラム」に参加してきました。

すでにフェイスブックで感想を少し述べているので、下欄に転載いたしますが、加えて、今回は国の機構でいうと経済産業省と農林水産省の管轄ということなのですが、地域レベル、現場・実践レベルでは「六次産業化・農商工連携」は、あくまで一つの切り口であり、取り組み上の目的としては、ここで触れられていない他の分野とも共通しており、特に近年は、様々な分野が歩み寄り、また多様な要素を統合させながら、社会環境や振興のための機能を作っていくということが求めらるのではないかと感じました。

私たちの国際日本酒普及連盟では、これらの社会環境整備や振興のための機能作りに関する知恵や実践のプラットフォームとして、大学と共同で「場」(「プラットフォーム」、あるいは社会的な場「Social Field」)づくりを行う計画を進めていますが、その中で国の機構でいうと、当然国税局(財務省)がお酒で絡んできますが、国際貿易振興や産業振興、コンテンツ産業の発信等の側面では経済産業省やジェトロが、お酒や食文化を通じた観光や地域づくりについては国土交通省が、食文化の振興を通じた農業の振興や保全という点では農林水産省が管轄となります。

全ては「地域資源をベースにした産業化による振興と地域環境の保全による生活者の暮らしの向上」が共通のテーマ、ないし目的であると思うのですが、どこを切り口や取り組みの対象とするかによって変わってくるのです。

しかしながら、この不可分のテーマや専門性、さらには立場(産官学民、あるいは金融等)が広いフィールドを視野に入れて共通理解を進めながら地域をよりよくしていくために必要な協力を行っていくという、今まであまり機構化や社会的に明確に位置付けられてこなかった流れや機能というものが、社会的に求められている。時代の要請が高まっているのだと思います。

地域の産業支援施策の中では、農業がテーマであったり、観光が切り口であったりと、起業支援がテーマであったり様々な細部の違いはありますが、近年は上述した流れから、多機能で包括的に連携し、地域産業の側面的なバックアップを図っていく体制もちらほらと顕在化しているように思います。

そのような流れの中で、いかにして長期的な成果と短期的な成果をバランスをとり、成果の見える化や目標設定の最適化、叡智や実践の結集をし、「真の意味ある取り組み」として継続していくか、成果をあげるかがそれぞれの場面で求められています。

そんな中で、ISF(国際日本酒普及連盟)や弊社(久悦)も「間違いなくお役に立てる」、あるいは「意義ある取り組みをすでに構築している状態」の、存在として「地域資源をベースにした産業化による振興と地域環境の保全による生活者の暮らしの向上」に貢献していくことができればと考えております。

以下は、一応、フェイスブックに共有させていただいたコメントも掲載します。

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● 意欲的にマーケットインを意識して色々取り組む生産者もいるが、プロダクト主義でまともな商取引きや柔軟な発信が出来ないことや、中には自分が目立ちたくてお客さんの気持ちを鑑みず「この方商品じゃなくて自分を売ってるね」と皮肉を言われる始末の人もいる。そして良いものを作っていても、このようなバランス欠如から次世代への継承がより困難になる。市場や制度の問題を挙げる人もいるが、生産者のバランス感覚、オープンマインド、マーケットインの感覚、マネジメントの欠如も現代の一次産業の現状を招いているのではないか。そのような現実に良く直面するので、岐阜大学の前澤先生のマーケットインの講話は色々と頷けるものだった。一つ思ったのは、マーケットインやOnetoOneという概念もあるが、これを進めて「ソーシャルイン」つまり市場が求めているニーズと重ねて社会的に求められるニーズやシーズを踏まえ消費者ニーズとバランスをとり影響を与え合うことの概念化も必要かと思った。

● JA愛知連合会のプレゼンテーションや浜松市商工会議所のプレゼンテーションもあり、非常に興味深く聞かせていただいた。JAの機構や事業への批判や商工会議所が仕事してるのか?といった批判も聞くが、熱心に意義ある取り組みのエッセンスを見させていただいた。批判対象だけにフォーカスするのではなく、学べることに目と心を開き自らの現状を省みることの重要性に気づかされた。

● 余談として、岐阜県の作成する特産品カタログが無駄に良い紙を使っているが中身がなく残念だった。先のマーケットインの話ではないが何のための冊子か不明。隣の長野県を大いに見習っていただきたい。

色々勉強になる会でした。

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〔文責:宮田久司〕

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見えない資産を伝える

久悦では、ISF(国際日本酒普及連盟)を通じて、国内外における日本酒と食文化を始めとした文化の普及のための事業を推進しています。

国内外ですので、もちろん海外での動きも対象となります。

先日は、フランス南部のビール醸造家からコンタクトがあり、現地で100%フランス産の地酒を造りたいということで相談がありました。

フランスをはじめ、欧州でも日本酒に対する理解が進み、一部の中では広がってきていますが、一方でマスプロダクトとしての中国産清酒や、場合によっては蒸留酒なども日本酒として売られている実情があります。

そのような環境にあって、100%フランス産地酒を造り、その楽しみや価値を伝えていこうとする彼らは、私たちが現地で広めていきたい日本酒の(社会的価値も含めた)文化的価値を広めていくことではじめて、彼らのやっている事業が報われるという点において、私たちと利害が一致しており、運命共同体でもあります。

私たちも、彼らの日本酒に対する情熱や、感性に共感をし、プロジェクトの実現に向けた支援をすることになりました。

フランスでは、もちろんワインのような地酒文化(テロワール・ワインの文化)や社会環境の整備が進んでおり、彼らの取り組みは発信という側面のみならず、保全や自国の地酒を取り巻く社会環境整備の上でも有益であることは間違いないものと思われます。

先日は、日本国内の醸造家、公的機関の醸造研究者、大学研究者(応用微生物学、地理学等)などの関係者を紹介し、現地製造にかかる課題整理と解決のためのチーム作りを行いました。

すべての関係者に対して熱心に質問し、メモを取る彼ら。
− ある醸造家の話とあなた(私共が紹介した醸造家)の話、蔵元によってこの点については言っていることが一致しないのですが・・?
− 日本酒を作るにあたり水が重要であるということですが、その採水地や水源を保護する規制はあるのですか?

・・・などなど、鋭い問いかけも随所に出てきます。

何せ、彼らの使用するお米はカマルグというフランス南部の地域で作られたものを予定しているのですが、自然保護地区であり、かつ合鴨農法で作られた無農薬のものを用いる予定なのです。
自然保護区、また彼らの醸造地であるラングドック一帯も、もちろん地域でAOC/IGPの原産地呼称制度に取り組んでいるという点で地域性と環境を守り、食文化の保全と発展を支える社会環境整備という点において(あるいは消費者理解やそのために「食の遺産と文化のフランス委員会(Repas gastronomique des Français)」などが進めているガストロノミーの普及・啓発という点においても)、彼らの方が確実に上手なのです。

我々日本の文化は、ある意味今までの延長線上の中で生成され、継承されてきているものを、現代の中で享受し、また担い手となり受け継いでいるということに過ぎないため、あえて客観的視点から取りまとめ、様々な地域軸や分野軸を横断して情報化(形式知化)させる機会が特にある訳ではないため、実のところ統合され、一貫した情報が存在していないというのが日本酒を取り巻く一つの実情でもあると思うのです。

ましてや、その整理された情報を元に、保全や振興のための手立て(施策)を捻出していこうという方向性や実情なんて・・

彼らのメモを取る姿を見ていて、「むしろ彼らの方がより客観的に、正確に、日本酒というものを捉え、伝えていくことができるのではないか。それは大変ありがたいことだが、もう少し日本人もその点を踏まえて発信できないものなのだろうか?」

などと感想を持ったのでした。

この客観的に見ながら、正確に捉え、形式知化させて発信していくという事例は、日本の文化を見る限り事例は稀有なのではないかと思います。

先日、クラシック専門家の方に「クラシック音楽の起源と定義」を聞くと、グレゴリオ聖歌に始まる譜面化された音楽がその起源であると聞きました。
日本の音楽の授業も、国歌も、ある意味このクラシック音楽の系譜上に存在しているとも言えるのではないかと思いますが、一方で日本の音楽について、そこまで体系化・系譜化されたものは無いのではないでしょうか?

日本の演劇の世界では、坪内逍遙がその系譜を整理したと言われていますが、日本においては存在感がありません。
武士道であれば新渡戸稲造が、禅や日本の宗教的観念は鈴木大拙が、茶の湯については岡倉点心(覚三)がその役割を担ったと思われますが、きっと「日本酒(SAKE)」についても、そのような目に見えない(Intangible)ものを分かりやすく浮き立たせ、シェアし、保全・継承・発展につなげるということが不可欠であると思います。

最近は、よく地域振興のネタとしてもユネスコの無形文化遺産(Intangible Cultural Heritage)登録が持て囃されていますが、これも目に見えづらい文化的価値の意味と意義を捉え、現代社会・経済環境の中で保全する意味性を浮き立たせることができ、かつ発信のためのツールとして使える有益な施策であると思います。

実は、この施策は採用された当時ユネスコ事務局長であった松浦晃一郎氏のイニシアチブもあり、目に見えないものを大切にするアジア的感性からその遺産を保全することを目的に実現されたものなのだそうです。
目に見えない伝統的文化価値を知り、伝えることの重要性を認識し、実行に移せる稀有な日本人がここにも一人いたということでしょうか。

もちろん、現代は世界的に人々がつながり、共通の課題や関心、目標を共有することのできる時代です。

私たちは、そのような背景から、日本人のみならず、今回のフランス人のような意志ある人々と協業し、この見えない資産を見える化させ、その価値を様々な観点から浮き上がらせ、発信や保全の基礎として用いていきたいと考えております。

きっとクールジャパン施策で言われている「コンテンツ化」の基盤はそこにあるのでしょう?
と思うのです。

〔文責:宮田久司〕

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